2016年6月22日水曜日

劣化する農地


地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、巻頭言を土日を除く毎日1編ずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1992年8月号)

劣化する農地


 世界的な規模で農地の生命力が低下している。日本ではいわゆる金肥といわれた化学肥料の
効果を農家に見せつけて、科学農法時代に入ったのが約四十年前である。同時に防虫除虫の問
題が発生して次第に農薬の使用が加速する。このように技術やお金を投入して農業改良に尽く
してきたが、どうしたことであろうか、四十年前にくらべて農地に地力がなくなった。我々の
目で見ても、ふかふかであたたか味のあった同じ畑が、かたまりがごろごろした生気のない土
にかわっている。
 熊本の中嶋常允氏はこのような農地の劣化に早くから注目し、土壌の研究を総合的に行って
きた。氏は、化学肥料農業は微量元素に関しては全くの“取りっぱなし農業”であるという。
つまり昔の堆肥農業はすべての元素成分を元の土に還元していたが、化学肥料農業は一時的に
効果のあるものだけを補充して、捉えにくい微量ミネラル元素などは無視してきた。劣化した
農地に有機農法といって堆肥を施しても、長年にわたって失った微量元素は補うことができな
い。仮に昔ながらの人畜の糞尿を使った堆肥農業に戻っても、元どおりに回復するには半世紀
以上もかかるだろう。元素のバランスを欠いた劣化農地は、生命力の弱い作物を作るから防虫
農薬が必要条件となる。このような作物を食べ続けている人間は、農薬の害の他に微量元素欠
如により次第に免疫力を失う。
 近代科学農法の先進国アメリカでは農地の劣化は深刻で、農作不能地帯が広がっているとい
う。そして化学肥料を導入しはじめたアジア全域が、アメリカや日本と同じ道を辿っている。(MM)
                         1992年8月10日発行

(次世代のつぶやき)
数千万年、それ以上に私たち生き物を育んでくれた大地を人類はたった数十年で、劣化させてしまいました。数億年きれいにしてきた空気を、ここ数十年で一気に汚染しました。
しっぺ返しが来ないわけはありません。本気で地球直しをしないと。
(2016年6月22日 増田圭一郎 記)