2016年2月15日月曜日

安全指南書


地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、巻頭言を土日を除く毎日1編ずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1988年8月号)

安全指南書


 海上自衛隊の潜水艦との衝突による遊漁船転覆沈没事故は、多くの犠牲者を出す大惨事とな
った。事故原因については、順次明らかにされていくであろうが、この事故は我が国の民主化
のレベルの低さを如実にあらわした事件であると思う。横切れると思って回避行動の遅れた潜
水艦側と、一歩道を譲ろうとした遊漁船の双方が問題の焦点になっている。ここで問いたいの
は、航行規則の下で平等であるべき両船の船長の心の中に傲慢と卑屈という不平等意識が存在
していなかったかということである。回避義務や初期救助を怠った潜水艦々長や海上自衛隊の
誠意を欠いた行為については、その責任を厳しく追及しなければなるまい。この点は多くの指
摘が報道されているので、敢えて触れずにおこう。
 私はむしろ、事故時に遊漁船々長が安易な譲歩をしていたとしたら、そこを問題にしたい。
確かに黒い艦隊の行進は無気味で恐怖心をかきたてるであろう。しかし、本当に平等の原則を
個人のレベルで十分に身につけて堂々と行動していたら、あるいは今度の事故は回避出来てい
たのではないかという思いがどこかに残る。
 ふりかえって我々は日常生活の中で、官憲や原発に代表される産業への過剰な特権付与など
一歩譲っているうちに、周辺に危機を呼び寄せてはいまいか。強者のおごり以上にわれわれ国
民の長いものには巻かれろ式の卑屈な心こそ恐れなければなるまい。
 日本国憲法は公務員の横暴を禁じ、国民に徹底した平等主義への自覚を求めている。この機
会に、個人生活から国家運営に至るまでの安全指南書として推奨したい。 (MM)
                               1988年8月10日発行

(次世代のつぶやき)
船や飛行機の事故で、思うことがあります。
昔、飛行機のライセンスを取るために訓練していたときのこと。航空法の勉強をしていて、徹底した合理性を学びました。
そこで、印象的なことは小さくて原始的なものほど、原則的に空の優先順位が高いことでした。ですから気球は最優先です。ジェット機のようなものは、ずいぶん後になります。
強い者が威張るのと逆ですね。
それと、空を飛ぶ人の仲間意識と平等意識はとても高いように感じました。エアーマンシップといいます。またちょっとかじっただけですが、船の世界も似た雰囲気を感じました。
自然の合理性を追究すれば平等があたりまえなのに、地上では合理性に矛盾をしても欲望に走ってしまいますね。 (2016年2月15日 増田圭一郎 記)